英議員団、暗号資産決済の制限を巡り銀行対応を調査

AI マーケットサマリー
英国議会議員のAPPGは、英国の暗号資産規制体制の拡大(2027年から施行)を前に、銀行による暗号資産決済の上限設定、送金のブロック、口座閉鎖についての調査を開始した。このプロセスは、AMLおよび不正防止規則の下で、比例性のあるリスクベースの管理に関するガイダンスと監督上の期待を形成する可能性がある。短期的には、英国向けの取引所や暗号資産企業にとって政策上の不確実性を高める一方で、規制対象事業体に対する銀行アクセスが将来的に正常化する可能性を示している。
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英国の暗号資産(デジタル資産)事業者が銀行口座の開設・維持や決済サービスの利用で直面している障壁を巡り、議員による調査が始まった。暗号資産関連の送金ブロックや取引上限、口座閉鎖といった措置が、詐欺や金融犯罪リスクに照らして適切な範囲に収まっているかを検証する。 超党派議員グループ「UK Crypto and Digital Assets All-Party Parliamentary Group(APPG)」は2026年7月21日、銀行取引へのアクセスと暗号資産決済に対する制限を対象とする調査(banking inquiry)を開始した。銀行、決済事業者、フィンテック、暗号資産企業、学界、消費者団体に対し、具体例や裏付け資料を含む情報提供を要請している。書面提出の受付は6週間で、締め切りは2026年8月31日。 APPGによれば、一部企業は口座を開設できない、または口座維持が難しい状況を訴えている。加盟店向けサービス(merchant services)、決済システム、保険、関連する専門サービスの利用で支障が出たとの報告もある。暗号資産決済を巡っては、特定プラットフォームへの送金停止や顧客取引の上限制などが指摘され、各行がどのような基準で制限を適用し、リスクを評価しているのかも論点となる。消費者への影響のほか、投資、競争、イノベーション、事業運営への波及も調べる。 APPG共同議長のヴェイジー卿(Lord Vaizey of Didcot)は、企業側から銀行アクセスの問題が繰り返し提起されてきたと説明。共同議長は労働党のグリンダー・シン・ジョサン下院議員(Gurinder Singh Josan)も務める。APPGは、制限の背景にある法的・規制上の要因、商業上・運用上の事情に関する見解も求めた。 一方、英国議会はAPPGを「非公式の超党派組織」と位置付けており、法的拘束力のある命令を出したり、法律を制定したりする権限はない。ただし最終的な提言は政策形成に影響し得る。政府部門、規制当局、議会委員会が将来の検討で結論を参照する可能性がある。APPGは提出内容を精査したうえで報告書を公表するとしているが、公表時期は示していない。 今回の調査は、2022〜2023年に実施された英国の暗号資産政策に関する調査の流れも踏まえる。当時のレビューでは、デジタル資産企業が挙げた障壁の一つとして銀行アクセスが指摘されていた。今回は暗号資産業界に限らず、銀行・決済側からも、コンプライアンス管理、顧客リスク評価、取引ポリシーの説明を受けることで、証拠の裾野を広げる狙いがある。口座閉鎖は法的・商業的な論点が分かれる上、銀行はマネーロンダリング対策や不正防止の規則の下でリスク管理責任を負う。 金融行為規制機構(FCA)は2023年、決済口座へのアクセスや口座閉鎖を巡る実態をレビューし、暗号資産企業や決済会社が報告した問題も個別に検証していた。 調査が行われる背景には、英国が暗号資産規制の枠組みを拡充しようとしている事情がある。2026年2月には「Financial Services and Markets Act 2000 (Cryptoassets) Regulations 2026」が成立し、英財務省(HM Treasury)は同枠組みが2027年10月に発効するとしている。対象となる業務を行う企業は、制度開始後にFCAの認可が必要になる見通しだ。APPGは、認可要件が本格化する前に銀行アクセスの実態を点検する必要があるとの立場だ。規制下の企業であっても、資金の受け取り、給与支払い、仕入れ先への決済には銀行口座が欠かせない。 APPGは海外の対応事例も調査対象に含め、保護策を維持しつつアクセス改善を実現した国・地域の例を求めた。銀行側は、取引制限が詐欺被害や不正送金から顧客を守ると主張し得る。一方、暗号資産企業は、包括的な制限が許認可の有無を問わず一律に扱う結果になっていると反論する可能性がある。提出された証拠を踏まえ、APPGが規制ガイダンス、コミュニケーション強化、銀行慣行の見直しなどを支持するかが焦点となる。ただし提言の実行には、政府、規制当局、金融機関の対応が必要になる。 銀行アクセスの議論は、デジタル金融を巡る政策全体の一部でもある。英国当局はステーブルコイン、トークン化された決済、デジタル証券に関する規則整備も進めている。イングランド銀行とFCAは2026年6月、ステーブルコインに関する共同方針を提示。適格な英国発行ステーブルコインと小売決済での利用はFCAが監督し、英財務省が発行体をシステミック(systemic)と分類した場合にはイングランド銀行も監督を分担する枠組みとした。通常の市場監督と金融安定上の論点を切り分ける設計となる。 英財務省は、従来型とトークン化の決済サービスを統合的に扱う枠組みも支持し、ステーブルコインやトークン化預金(tokenized deposits)も対象に含める方針を示した。暗号資産規制の進展は、正式な銀行取引関係への需要を高める可能性がある。認可企業は顧客資金の管理、給与、納税、運転資金の支払いで銀行インフラに依存するためだ。 もっとも、今回の議員団調査自体が銀行に特定企業へのサービス提供を義務付けることはない。結論は、金融機関がリスクベースの判断をどのように文書化し、運用するべきかを巡る指針づくりに影響する可能性がある。 本稿は情報提供を目的としたもので、法務・規制・金融上の助言ではない。議会の調査は進行中で、提言内容は今後変更される可能性がある。証拠提出の期限は2026年8月31日で、APPGはその後に回答を精査し、報告書と提言を公表する予定だが、公表時期は未定としている。