SEC、トークン資金調達向けの暗号資産規制枠組み"Reg Crypto"を提案
AI マーケットサマリー
SEC(米証券取引委員会)が提案する"Reg Crypto"は、トークンの資金調達、開示、およびトークン関連の投資契約を終了させ得る明確に定義された"exit"プロセスのための特別に設計された枠組みを創設し、多くの既存トークンにおける証券リスクを明確化する可能性がある。新規オファリングでの採用は不透明であり、当該規則は60日間のコメント期間を伴う提案段階にとどまるものの、コンプライアンス経路の制度化と、より明確なタイムラインの見通しは、米国の暗号資産市場構造に対して概ね追い風となっている。
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米証券取引委員会(SEC)は8月18日、暗号資産の提供・販売を対象にした新たな提案規則「Regulation of Crypto Assets(Reg Crypto)」を公表した。企業株式向けに作られた既存の証券ルールを暗号資産に当てはめるのではなく、トークン販売を念頭に置いた米国初の包括的な枠組みと位置付けられる。
提案の柱は2つある。1つ目は、一定の条件下で米国の一般投資家に対してトークンを販売するための法的なルートを示し、登録済みの公募を伴わずに非適格投資家の参加も可能にする点。2つ目は、トークンに関連する投資契約を終了させるための正式な手続きを設け、明確な期限を伴う"出口"を制度化する点だ。
過去10年、米国のトークン発行体は、(実務上ほぼ達成困難な)登録を行うか、国外で発行するかの二択を迫られてきた。Reg Cryptoは第三の選択肢を提示すると同時に、すでに市場で取引されながら法的位置付けが曖昧な多数のトークンに、整理の道筋を与えることを狙う。
対象となるのは、暗号資産そのものが証券ではない一方、提供・販売の形態が投資契約の一部を構成し、発行体が当該契約を通じてプロダクト、ネットワーク、またはエコシステムを構築する旨を約束していたケース。トークン化株式・トークン化債券、ならびにトークンを株式など証券に連動させるスキームは明確に適用除外とされた。
提案は、資金調達、開示、開発、終了(Exit)の4段階で構成される。
資金調達:スタートアップ向けの一度限りの免除により、最大4年間で最大500万ドルまで調達可能とし、期間の開始時と終了時に公的な提出書類を求める。より大きな枠としてRegulation A(一定の開示要件を満たせば一般から資金を募れる公募免除)に基づく免除も新設され、区分(tier)に応じて12カ月以内に最大2,000万ドルまたは7,500万ドルの調達を認める。こちらはSECの適格要件、継続的な報告、財務諸表の提出が条件となり、Tier 2では監査済み財務諸表も必要。さらに、組織、経営、資産の面で米国との「実質的な関連性」を維持することが求められる。
開示:トークン供給量と放出スケジュール、ミント/バーンの仕組み、ガバナンス構造とスマートコントラクトの権限設定、ソースコード、そして最重要項目として、発行体が構築を約束する内容と進捗状況など、トークン固有の情報開示を義務付ける。
開発:スタートアップ免除では、約束した中核的な構築作業を完了するために最大4年の猶予を与える。
終了(Exit):発行体が当該活動を完了、または恒久的に停止し、新たな取り組みを約束せず、移行報告書を提出した時点で、関連する投資契約は終了したものとみなす。その後、SECは当該暗号資産を、証券法および証券取引所法上の投資契約の対象とは扱わない。
この"セーフハーバー"は、上記の資金調達免除を利用していない発行体にも適用される。将来のトークン販売だけでなく、何年も前に発行され、証券該当性が不透明な既存トークンにも出口を提供し得る点が特徴となる。
SECは事務負担の試算にあたり、投資契約セーフハーバーを年約475社が利用し、新設の2つの免除によるオファリングは年約130件と仮定した。短期的には、新規発行の急増よりも、既存資産の法的位置付けの整理に効く可能性が高いことを示唆する。
免除の下で販売された投資契約は、制限証券とは扱われず、契約で別途制限がない限り直ちに再販売できる。加えて、発行体が継続義務を履行している限り、対象となる一次募集と一部の二次取引について、州法上の登録・適格性要件に優先する規定も盛り込まれた。一方、取引所、ブローカー、ディーラー、カストディなどの業者規制は対象外で、SECが別途検討してきたトークン化証券やオンチェーン取引に関する免除案とも異なる。
パブリックコメント期間は、官報(Federal Register)掲載後60日間。SECは8月14日に予定していた公開会合を中止し、4日後に本提案を公表した。現職の3委員(ポール・アトキンス委員長、ヘスター・ピアース委員、マーク・ウエダ委員)はいずれも支持する声明を出している。もっとも、2027年より前の正式採択を狙う場合、この日程はなおタイトとみられる。
見方:Galaxy Researchは、上院でCLARITY法が停滞する一方、アトキンス体制のSECが業界の規制明確化につながる手当てを進めていると指摘する。Reg Cryptoは、議会を待たずにSECが自ら枠組みの近代化に踏み込む姿勢を示すシグナルだという。
とりわけ開示制度は、トークン購入者が重視する情報に焦点を当てる。供給量と放出計画、ミント/バーン、スマートコントラクト権限、ソースコードへのリンク、エコシステム構造、そして"何を作るのか"と進捗の継続的な文書化。株式投資家向けの開示とは優先順位が異なる点を、SECが制度として織り込もうとしている。
また、"時間"の扱いも重要だとする。株式は発行後も証券性が基本的に恒久的に続くのに対し、Reg Cryptoでは、トークンに紐づく投資契約が発行時に始まり、開発期間中は発行体の義務を拘束し、一定の条件と公的な記録に基づく日付で終了し得る。トークン自体が存続し取引され続けても、投資契約のライフサイクルを執行可能なルールに落とし込む点が特徴となる。
資金調達免除がどこまで使われるかは不透明だ。Regulation DのRule 506は引き続き有効で、調達上限がなく、SECの資格付けを要せず、継続的な公的報告も求めない。これに対しReg Cryptoは、非適格投資家を含む合法的な公募を可能にし、関連する証券の即時移転や、州法要件に対する優先を提供する。トークンを流通させたいプロジェクトにとって、連邦レベルの保有期間が設けられていない点は、提案全体の中でも見落とされがちな利点とされる。
一方でコストもある。発行体は実質的な開示・報告義務を負い、大型の免除を使う場合は米国との実質的関連性を維持しなければならない。過去、多くのプロジェクトが米国外の財団を選んだのは、米国証券法回避だけでなく、ガバナンス、資金管理、税務などの理由も大きい。トークン販売収益やトレジャリー配分の米国税制上の扱いが明確にならない限り、発行体、経営、事業、資産の大半を米国へ戻す要件は参入障壁になり得る。スタートアップ免除には同様の米国登録要件がなく、上限500万ドルながら初期段階では利用が広がる可能性がある。
前向きに解決が進めば、"トークン資金調達2.0"とも言える局面が現実味を帯びる。暗号資産の初期ユースケースの1つは資本形成であり、プロジェクトがベンチャーキャピタルや従来型の私募に依存せず、将来の利用者から直接資金を集められる点にあった。2017年の資金調達サイクルは需要の強さを示す一方、信頼できる開示、投資家保護、執行可能なルールが欠けた弊害も露呈した。
Reg Cryptoは当時不足していた要素を制度化する。資金規模に応じた免除、トークン特性に沿った開示、一定の枠内での一般投資家参加、発行体の証券法上の義務が終了する時点の明確化。Regulation A+が支援サービスのエコシステムを生んだように、証券弁護士、監査法人、技術開示支援、発行プラットフォーム、コンプライアンス事業者などの需要拡大も見込まれる。
採用に動きやすいのは、すでに米国法人を持ち、組織体制が整い、継続開示コストを負担できるチームとされる。SEC試算では、独立したセーフハーバーでの移行報告書作成には平均約30人時を要し、外部専門家コストも含まれる。出口手続きでさえプロジェクト単独では完結しにくいという。
短期的に重要なのは"資金調達"より"出口"だと同社はみる。Reg Cryptoの即効性は、米国内での新規発行復活より、レガシートークンの整理に現れる可能性が高い。これまで市場は、当局発言、和解、訴訟を手がかりに投資契約の終了時点を推測してきた。"完全な分散化"(単一主体の支配がなく、価値が主に発行体の努力に依存しない状態)が証券規制を免れる基準になり得るとの期待もあったが、明確な定義を欠き、不確実性の源となっていた。Reg Cryptoは、曖昧さを提出義務と日付の明確化で置き換える狙いがある。
もっとも現時点では提案段階で、採択されても内容が修正される可能性は残る。60日間の意見募集を経る必要があり、アトキンス委員長も声明で、将来の規制当局による枠組みの覆しを防ぐには立法が不可欠だと述べた。州当局が連邦法の広範な優先規定に異議を唱える可能性もある。Reg Cryptoは重要な規制明確化をもたらし得るが、恒久性を担保できるのは最終的に議会だ、という見立てが示されている。