SEC、トークン化証券の所有者記録にブロックチェーン活用を提案

AI マーケットサマリー
SECが、ブロックチェーン台帳を含む電子データベースをトークン化証券の公式な株主名簿として認める提案は、現在の二重台帳における法的/運用上の不一致を縮小するだろう。採用されれば、規制対象のオンチェーン移転エージェントおよびトークン化プラットフォームにとって、照合リスクと摩擦を低減し、コンプライアンス管理が組み込まれたパブリックチェーン・インフラの機関投資家による採用を後押しする可能性がある。短期的には、60日間の意見募集期間と、移転エージェント機能の実装負担に注目が移る。
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株式をブロックチェーン上でトークン化する企業にとって悩ましいのは、オンチェーンの台帳にはトークンの保有者が示される一方、法的に効力を持つ株主名簿が別の場所で管理されている点だ。現状、どのデータベースを正式な記録とみなすかとなれば、たとえデジタル台帳の方が最新でも、法律実務ではブロックチェーン外の記録が優先されがちだった。 こうした状況が変わる可能性が出てきた。米証券取引委員会(SEC)は先週、約50年ぶりにトランスファー・エージェント(名義書換機関)規則を大幅に見直す提案を公表し、電子データベースを公式な有価証券所有記録として明示的に認める方針を打ち出した。対象にはブロックチェーン台帳も含まれる。 提案が承認されれば、ブロックチェーンが"master security file"(基幹の所有者記録)となり、トークン化証券が現在も依存しがちなオフチェーンの並行記録を置き換え得る。要するに、ブロックチェーンは市場インフラの上に載る技術から、法的に認知されたインフラの一部へ踏み込むことになる。 SEC登録のオンチェーン型トランスファー・エージェントであるFairmintのCEO、Joris Delanoue氏は、"かつて'master securityholder file'はキャビネットの紙だった。いまはデータベースだ。今回の提案は、ブロックチェーンがそのデータベースになり得ることを、単なるコピーではなく本体として認めている"と述べた。 現在、多くのトークン化証券は実質的に"2つの記録"で運用されている。オンチェーンのトークン台帳と、公式の株主名簿だ。提案が成立すれば、ブロックチェーンが権威ある登録簿として機能し、発行体やトランスファー・エージェントは重複記録の維持や移転のたびの照合作業が不要になる可能性がある。これにより、オンチェーンの記録と法的な所有記録が食い違うリスクや、事務負担の軽減が見込まれる。 ファンドのトークン化を手掛けるCentrifugeの最高法務責任者(CLO)、Eli Cohen氏は、現在の"2台帳"体制を"1ステップのプロセス"に変える可能性があると指摘し、ブロックチェーン自体が基幹ファイルになり得ると語った。同氏によれば、いまの"2ステップ"は非効率なだけでなく、深刻な事態で法務上の大きな問題になりかねない。"倒産や破産が起きれば、ただただ混乱する"とCohen氏は述べた。 もっとも注意点もある。この提案は、トークン化証券を全面的に"パーミッションレス"にすることを意味しない。Delanoue氏は、ブロックチェーン自体はオープンなままでもよいが、資産は誰が保有でき、どのように移転できるかといった既存ルールに従う必要があると説明する。実務では、パブリックチェーンが所有記録を保持しつつ、本人確認、移転制限などの規制対応はトークン側に組み込む形が想定される。 また、提案はトランスファー・エージェント業務を担う企業に対する要求水準も引き上げる。デジタル型であっても、株主の死亡、相続、法定通知、郵送先住所の管理、保有制限、トラブル時の記録訂正といった"地味だが不可欠"な実務を扱わなければならない。こうしたプロセスの一部は依然として物理的だ。 Delanoue氏は例として郵便物の処理を挙げ、規定手順に沿って受領、開封、識別し、必要な対応を行う義務があると指摘した。現行の処理期限は35日だが、提案では1日に短縮される可能性があるという。 近年、トークン化関連企業の中にはトランスファー・エージェントを買収したり、ライセンスを取得したりして規制下の証券インフラに踏み込む動きがある。そうした企業にとって、スマートコントラクトだけでは不十分で、人員・システム・統制を整え、迅速かつ確実に要請へ対応できる体制が求められる。Delanoue氏は"ただ乗りはもうできない"とし、"公式の所有記録を維持したいなら、トランスファー・エージェント機能をフルで運営しなければならない"と述べた。 その結果、フル運営の負担が想定以上に重いと判断する企業も出て、工程の一部を既存の大手事業者に委ねる動きが広がる可能性があるとCohen氏はみている。 今後はSEC案に対し、60日間のパブリックコメント期間が設けられ、締め切りは11月上旬となる見通しだ。Cohen氏は、従来型の金融業界に加え、ブロックチェーン・ネイティブ企業からも意見提出が相次ぐと予想している。