フランス、2027年からステーブルコインへの交換課税を検討 高額保有者の退出税も拡大へ
AI マーケットサマリー
フランスの財政委員会は、2027年から暗号資産から法定通貨にペッグされたステーブルコインへのスワップに課税する提案を前進させ、暗号資産保有額が80万ユーロを超える世帯に対する未実現利益への出国税(exit tax)を拡大する案も進めた。成立すれば、法定通貨への現金化がなくてもエコシステム内の活動が課税事象を引き起こし得るため、流動性およびコンプライアンス上の摩擦が増大する可能性がある。10年間の暗号資産損失の繰越控除がボラティリティを一部相殺する一方、2026年からのDAC8による報告は執行可能性を高める。
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フランス国民議会の財政委員会は、暗号資産(クリプト)取引に伴う課税の見直しを前進させた。法定通貨に連動するステーブルコインへの交換をキャピタルゲイン課税の対象に含める案と、国外へ居住地を移す高資産層への退出税(エグジットタックス)を拡大する案を、審査過程で複数の修正として採択した。
成立すれば、ユーロなど法定通貨へ換金しない場合でも、ステーブルコインに移した時点で課税が発生し得る。価値の退避や流動性管理にステーブルコインを用いる投資家にとって、実務面の影響が大きい。
■ポイント
・2027年1月1日から、法定通貨連動型ステーブルコインへの交換を課税取引として扱う修正案を承認
・実現損失は最長10年間の繰越控除を認める案も採択
・世帯の暗号資産保有額が80万ユーロ(約89万5,000ドル)を超える納税者が国外へ転居する場合、含み益にも課税し得る退出税の拡大を承認
■ステーブルコイン交換を課税対象へ
中核となるのは、フランス下院議員ニコラ・サンス氏が提出した修正案「ICF1826」で、水曜日に採択された。2027年1月1日以降、暗号資産を法定通貨連動型ステーブルコインへ交換する行為を課税対象とする内容だ。付属説明では、現行の取り扱いが立法上の"抜け穴"になっているとの問題意識が示されている。
提案が意図する効果は明確で、一定の解釈では非課税とされ得たステーブルコインへのスワップが、今後は売却同様に課税計算の対象となる。課税所得の算定は、処分した資産の取得価額を基礎に計算する。同一トークンを異なる価格で複数回取得している場合は、加重平均法で取得価額を算出すると定める。
国民議会本会議では、2027年度予算法案の審議が10月13日(火)に開始される予定。成立した場合、暗号資産エコシステム内に資金を留めたままでも、ステーブルコインへの交換をきっかけにキャピタルゲイン課税が発生し得る。
■"換金なし"でも課税の可能性
今回の案が注目されるのは、銀行口座への出金といった法定通貨への換金ではなく、特定の暗号資産(法定通貨連動型ステーブルコイン)へ価値を移す時点を課税トリガーに位置づける点にある。取引所での売買、決済フロー、担保運用、短期的なポジション調整などでステーブルコインを使う利用者ほど影響を受けやすい。
ユーロを引き出していないのに納税義務だけが先行し、納税に必要な法定通貨流動性が不足するミスマッチが起こり得る。戦略が直ちに成り立たなくなるとは限らないものの、反復的なトークン入れ替えや複数レッグ取引の末にステーブルコインで着地するケースでは、記録管理と取得価額(コストベース)の追跡がより重要になる。
■損失繰越と退出税の拡大
財政委員会は、価格変動リスクの影響を和らげ得る措置も採択した。ダニエル・ラバロンヌ下院議員が提出した修正案「ICCF798」は水曜日に承認され、暗号資産の実現損失を最長10年間繰り越せるようにする。
また木曜日には、退出税の拡大に関する修正案も採択された。居住地を国外へ移す時点で、世帯の暗号資産保有額が80万ユーロ(約89万5,000ドル)を超える納税者について、売却していない含み益にも課税を及ぼし得る内容とされる。法定通貨への売却がなくても、海外移住の税コストが上がる可能性がある。
■EUの税制動向とDAC8の影響
フランスの動きは単独ではない。欧州では暗号資産課税の設計が国ごとに異なる形で進む。例として、ギリシャでは国家経済・財務省が個人の暗号資産キャピタルゲインに10%課税する法案草案を公表し、年間利益500ユーロ(約560ドル)までは非課税とする案が示された。同草案では、暗号資産同士の交換は非課税と説明されている。
一方でEUレベルでは、税務当局の把握力を高める報告義務が導入される。フランスを含む加盟国は、行政協力指令(DAC)の第8次改正(DAC8)に基づく税務報告を適用する必要がある。DAC8では暗号資産サービス提供者が利用者の本人情報と取引データを収集し、各国税務当局へ報告する。各当局は加盟国間で情報を交換する。
報告義務の適用開始は2026年1月1日で、2026年分取引を対象とした初回の情報交換は2027年9月までに行われる予定だ。フランスの提案が"課税イベントの定義"を変えるのに対し、DAC8は"見える化"を進める。課税トリガーの明確化と報告能力の拡大が重なれば、納税ポジションの精査が強まる公算が大きい。
■今後の焦点
今後は、ステーブルコイン交換課税と退出税拡大が国会審議を経て最終的に残るかが焦点となる。10月13日開始予定の2027年度予算法案の議論に加え、"法定通貨連動型ステーブルコイン"の定義が実務上どこまで明確化されるか、法定通貨へ戻さずに発生する税負担への対応策が示されるかが注目される。