ECB、銀行向け"デジタル・ユーロ"相当の決済基盤「Pontes」稼働 トークン化債券の購入準備も開始
AI マーケットサマリー
ECBによるPontesの開始は、TARGETのレールを通じて中央銀行マネーでトークン化証券の決済を可能にするものであり、さらにECBが自己資金をユーロ建てトークン化債券に投資する計画は、欧州の機関投資家向けトークン化スタックを実質的に強化する。これによりホールセール決済の摩擦が軽減され、DLT市場インフラの配管に対する公的部門のコミットメントが示される。この取り組みは、銀行およびインフラ提供者による採用を加速させる可能性があり、以前のECBの議論(例:Ethereum/Solana)で言及されたパブリックチェーン上のトークン化のナラティブを間接的に支援する。
影響度
● 普通
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ユーロシステムは月曜日、分散型台帳(DLT)上の資産を中央銀行マネーで決済できる新たな接続基盤「Pontes」を立ち上げた。欧州中央銀行(ECB)は同時に、自身の自己資金の一部をトークン化証券へ投資する準備作業に着手し、当該購入の決済はPontesを通じて行う方針だ。決済レールを提供する側に回りつつ、そのレール上で投資家としても関与する形となり、欧州で形成が進むトークン化市場インフラの両サイドにECBが立つ格好になる。
Pontesは、DLT市場プラットフォームとユーロシステムの既存決済インフラであるTARGETの決済サービスを接続し、トークン化証券取引を中央銀行マネーで完結させる。ドイツ銀行、サンタンデール、ソシエテ・ジェネラル、欧州投資銀行(EIB)などの初期参加グループがオンボーディングを完了。Clearstream、Axiology、Cashlink、SWIATといったDLT運営事業者も参加している。今後数カ月で接続機関は増える見通しだ。
Bitwise Europeのリサーチ責任者アンドレ・ドラゴシュ氏は、Pontesを"銀行向けに利用可能となったデジタル・ユーロ"と表現。金融機関同士がトークン化取引を決済する際、決済資産として中央銀行マネーを維持できる点を指摘した。ホールセール市場では、リスクフリーの決済資金へのアクセスが、証券をDLTへ移行するうえで障害の一つとされてきた。ユーロシステムが実施した2024年のDLT実証では、公的部門・民間部門の参加者が、このアクセスを普及の鍵と位置付けたという。
Pontesは当初、提供機能を限定して開始し、順次機能拡充と稼働時間の延長を進める。全面実装の目標は2028年。ECBは稼働初日以降、実際の"ライブ決済"が確認できていないとしており、今後は取引の発生と量が、既接続機関の枠を超えて普及するかどうかの試金石となる。
ECBは新決済レール上で"買い手"にもなる構えだ。投資プログラムはインフラ提供にとどまらず、金融機関に採用を促す取引ライフサイクルをECB自身が直接体験する狙いがある。初期の購入対象は、ユーロ建てトークン化証券のうち、ユーロ圏の中央政府・地方政府・政府機関、および欧州の超国家機関が発行するものに重点を置く。ECBはPontesの利用を通じ、約定執行、決済、技術システム、ポートフォリオ運用にわたる経験を得られるとしている。
投資配分は当初、保有ポートフォリオ全体に比べ小規模となる可能性がある。ECBの自己資金運用残高は2025年末時点で231億ユーロで、うち国債がポートフォリオの73%を占める。トークン化証券への配分規模や購入開始時期は現時点で非公表で、準備作業完了後にECB理事会が決定する。自己資金は金融政策ポートフォリオとは別建てで管理され、運用収益はECBの運営費に充当される。これを用いることで、利下げ・利上げや量的緩和の手段とみなされにくい形で、トークン化市場をテストできる。
Pontesは、消費者向けのデジタル・ユーロよりも先行する。ECBは2027年後半に12カ月のリテール・パイロットを計画し、決済サービス提供者36社、加盟店、中央銀行職員が参加する見通し。必要な法整備が成立することを前提に、初回発行は2029年を目標としている。二つのプロジェクトは別トラックで進むが、欧州が中央銀行マネーをデジタル・インフラへ深く組み込もうとしている点では共通する。
関連論点として、ドラゴシュ氏はデジタル・ユーロにパブリック・ブロックチェーンが将来的に関与し得るかという議論にも言及した。フィナンシャル・タイムズは2025年、ドル連動型ステーブルコインの拡大への懸念が高まる中、欧州当局が技術選択肢としてEthereumやSolanaを含むネットワークを検討していたと報じた。ECBは当時、集中型・分散型双方の技術を検討しており、最終決定はしていないと説明している。
ホールセール領域では、リテール基盤の結論を待たずに、Pontesが現在進行形のルートを提供する。銀行や証券プラットフォームは、トークン化の発行・売買インフラを中央銀行決済へ接続し始められる。並行してユーロシステムはPontesを拡張し、2028年までに統合的な欧州DLT金融エコシステムの設計図策定を目指す広範な取り組み「Appia」の開発も進める。
商業面での成否は取引量に移る。すでに接続済みの機関は、どのトークン化証券と業務フローをPontes経由に切り替えるかを判断する必要がある。今後数カ月で追加の銀行・市場運営者も接続を検討する。ECBの投資配分も重要なシグナルとなり、初回購入の規模、時期、対象の内容が、欧州の新たな決済レールが"利用可能"な段階から"日常的に使われる市場インフラ"へ移行するスピードを映し出すことになる。