Coldcardハードウェアウォレットで乱数生成に欠陥 "セキュアエレメントは破られず"でも大規模なビットコイン流出
AI マーケットサマリー
テクニカルレビューでは、大規模かつ継続中のビットコイン窃盗の波は、セキュアエレメントの侵害ではなく、一部のColdcardファームウェアビルドにおけるシード生成の弱さに起因するとされている。報告された損失は、集計の締め切りや帰属範囲により約594 BTCから約1,816 BTCまで幅があり、不確実性とアドレス・マッピングの継続を浮き彫りにしている。この事件はハードウェアウォレットへの信頼を圧迫し、セルフカストディ利用者の運用リスクを高め、セキュリティ懸念の再燃を通じて短期的な暗号資産センチメントの重しとなり得る。
影響度
● 高い
影響を受ける資産
BTC/USDT+1.56%
AI インサイト · BTC/USDTAI インサイト
▼ 弱気
今すぐ取引
⚠️ AI によって生成されたインサイトはニュースコンテンツに基づくものであり、情報提供のみを目的としています。投資助言を構成するものではなく、BingX の見解を示すものでもありません。投資にはリスクが伴います。責任ある取引を心がけてください。
Coldcardで発生したビットコイン流出は、デュアル搭載されるセキュアエレメント(SE)自体の侵害ではなく、SEに渡される前の"シード生成"工程のソフトウェア不具合を突いたものだった。BITが2026年8月7日に公表した技術レビューによると、Microchip ATECC608とMaxim DS28C36Bという2つの耐タンパーSEチップは破られていない。SEが物理抽出に強固でも、生成時点から弱い鍵を保管してしまえば被害は防げない、という構図だ。
問題の中心は製造時設定にあった。The Hacker Newsが2026年8月1日にBlockの報告として伝えたところでは、Coldcardの生産用設定でマクロ「MICROPY_HW_ENABLE_RNG」が0に設定されていた。Coinkiteは独自のハードウェアRNGラッパーを提供しているためだという。ところが補助ライブラリ「libngu」が、そのマクロが"存在するか"だけを確認し、"有効化されているか"を検証しなかったため、ファームウェアはMicroPythonのフォールバック乱数生成器(Yasmarang)に結び付いた。
CoinDeskも2026年7月31日付の報道で同様の欠陥を説明している。ビルド設定がハードウェア乱数生成器をスキップさせ、補助ライブラリのチェックが設定の有効・無効ではなく"設定の有無"だけを判定していたという。Blockは当該変更を2021年3月1日付のコミットまで遡れるとしており、結果として不具合が5年以上見過ごされた形になる。
フォールバック乱数の入力源については各社の記述が細部で異なる。The Hacker News(Block引用)はデバイス固有IDとタイマーレジスタで初期化され、その後に新たなエントロピーが加わらなかったとしている。CoinDeskはチップのシリアル番号とクロックレジスタ(いずれも秘匿情報ではない)を入力と説明した。BITは、2つのYasmarangインスタンスをXORし、そのうち一方が公開のハードコード定数でシードされていたと記した。いずれも結論(実効エントロピーが低い)で対立しているわけではなく、外部の複数チームが観測可能な範囲から再構成していることによる差分だといえる。
Coinkiteの推定(The Hacker News、BIT、crypto.newsが引用)では、不具合の影響下で生成されたシードの実効エントロピーはMk2とMk3で約40ビット、Mk4・Mk5・Qで約72ビットにとどまり、標準的なBIP39シードの設計目標である128ビットを大きく下回る。Blockは実用的な総当たりの具体的数値提示を避け、条件付きの上限を示したうえで、より高い側の数値も"本来の73ビット級の暗号学的安全性"と同義ではないと警告している。現時点で、総当たりベンチマークの公開や、特定被害者のシードを復元して流出アドレスと照合したという公的報告は確認されていない(The Hacker News)。
BITはSEの役割の限界も明確にした。SEは"十分な乱数でシードが生成されたか"を検証しない。生成後のシードを保護するだけで、入力されたシードの品質を判断する手段はない。Coldcardは2チップ構成のため、物理抽出を狙う攻撃者は2種類のSEとメインプロセッサという複数の壁を越える必要があり、単一SE設計よりハードルが高いとBITは説明する。一方でBITによれば、LedgerとTrezorはいずれもSEは1つ。Spark Moneyの比較(記事内で参照した版では日付記載なし)は、LedgerがSTMicroelectronics製SEでモデルによりCommon Criteria EAL5+またはEAL6+認証、TrezorのSafe 3/Safe 5がInfineonのOPTIGA Trust Mを採用するとしている。また同比較は、TrezorはSE文書が公開され独立研究者が監査可能なのに対し、LedgerはSTMicroelectronicsとのNDA下でSEファームウェアが非公開で、アプリ層は概ねオープンと整理した。Coldcardはファームウェアソースを全面公開している(Spark Money、BIT)。それでも2021年3月の設定ミスは長期にわたり検知されなかった。オープンソースで"監査可能"であることと、実際に十分な監査が行われることは別問題であり、今回のように"設定が定義されているか"だけを確認するガードの設計ミスは、SEやオープンソースだけでは埋められない限界として浮き彫りになった。
被害規模の数字は報道各社で異なるが、主因は集計範囲と締め日の違いだ。CoinDesk(2026年7月31日付、更新あり)は、約500の単一署名ウォレットから594 BTC(約3,800万ドル)がUTC 01:31〜01:56にかけて移されたと報じた。crypto.news(2026年8月1日付)も594 BTC(約3,800万ドル)を挙げつつ、時刻をUTC 02:14〜02:39としており、タイムスタンプ差は手元の根拠だけでは解消できない。
The Hacker News(2026年8月1日付)は、Galaxy Researchが30日に41分間で1,196アドレスから計1,082.65 BTC(約7,020万ドル)が流出したとマッピングしたと伝え、その後の更新で追加の2波を確認したとして、観測合計は4,585アドレス・1,367.05 BTC(約8,860万ドル)に増えたとしている。BIT(2026年8月7日付)は2026年8月3日までの累計として、5,200超のアドレスから約1,816 BTC(1億1,600万ドル超)が流出し、"過去最大級のハードウェアウォレット悪用"と位置付けた。
これらの差は"どれが正しいか"というより、CoinDeskとcrypto.newsが初動の一斉流出を描写し、The Hacker NewsとBITがGalaxy Researchの追跡拡張に合わせて累積を更新したことに由来する。Galaxy Researchは、オンチェーンのパターン分析に基づく推定であり、弱いColdcardエントロピー由来かどうかを全件計算で確証したわけではないと注意喚起している(The Hacker News)。更新時点でも活動は継続中で、捜査当局に約600の攻撃者管理が疑われるアドレスを共有したとも述べており、総数は今後も変動し得る。
現時点で確定的な最終被害額は示されていない。594 BTC、1,082.65 BTC、1,367.05 BTC、1,816 BTCは、異なる時点・範囲での観測値として扱う必要がある。Coinkiteが"攻撃者がAIで欠陥を見つけた可能性"を主張し、自社のAIレビューでは重大点が見つからなかったと述べた件はcrypto.newsが報じたが、同メディア自身も"もっともらしいが未検証"としており、独立した裏付けは確認されていない。
また、特定の盗難シードを復元して流出アドレスと一致させたという公開報告はない(The Hacker News)。Galaxy Researchが同一オペレーターに帰属させた根拠は取引行動の類似性であり、原因の確定ではない。さらにGalaxyはWave 3をWave 1・2と結び付ける扱いを明確に避けた。
脆弱なファームウェア範囲についても見解が分かれる。CoinkiteのアドバイザリはMk3のファームウェア4.0.1〜4.1.9を脆弱としてMk2に言及しない。The Hacker Newsが紹介したBlockの別分析では、Mk2とMk3の4.0.0〜4.1.9が影響経路にあるとしており、Coinkiteの範囲より広い。どちらが最終的に決定的かは、ここに挙げた根拠だけでは断定できない。
LedgerやTrezorのシード生成コードが、BlockがColdcardに対して実施したような外部技術レビューを受けたかどうかも、同等の公開報告が見当たらないため判断できない。crypto.newsは2026年8月1日、Block、Trezor、Ledgerが"この特定の不具合の影響は受けない"と確認したと報じたが、これは今回のバグに関する言及であり、各社の乱数実装全体の包括監査を意味するものではない。
上記は、CoinDesk、The Hacker News、Block、BIT、crypto.news、Spark Money、Galaxy Researchに基づく。記述が食い違う箇所は、その旨を明記した。