AscendEX、RIBKとの資本再編が不成立となり業務を一時停止
AI マーケットサマリー
RIBKの資本再編が失敗したことを受けて、AscendEXがプラットフォームの運営および出金を停止したことで、中央集権型取引所の利用者にとってのカウンターパーティーリスクおよびカストディアルリスクへの懸念が高まっている。同社は口座記録が維持され、資産は管理下にあると主張しているものの、再開の時期を提示できず、全額返済を保証することもできず、破産の可能性も明示している。この一件は、暗号資産全体のリスク心理を圧迫し、流動性の高い主要銘柄における短期的なリスク削減を促す可能性がある。
影響度
● 普通
影響を受ける資産
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AscendEXは、想定していた資本再編取引が成立せず、過去の財務課題の解消と事業継続に必要な資金を確保できなくなったとして、2026年7月1日付で通常のプラットフォーム運営およびユーザーの出金サービスを一時停止した。運営陣および株主は離脱しておらず、今回の停止は事業放棄を意味しないとしている。
同社によると、ユーザーのアカウントデータは保持されており、同社が保有する残存デジタル資産は引き続き同社の管理下で安全に保全されている。
停止に至る背景として、同社は2021年12月に外部からのサイバー攻撃を受け、プラットフォーム上の一部デジタル資産が盗難被害に遭ったと説明。事件直後に関係当局へ通報し、刑事告訴を行ったうえで、盗難資産の追跡と回収を継続しているという。被害額は当時の市場価格ベースで大きかったものの、同社は損失をユーザーに転嫁せず、その後も運営と出金対応を継続した結果、財務状態が大きく悪化したとしている。今回の買収・資本再編は、こうした過去の問題の解決を目的としていた。
AscendEXは、2025年9月にThe Royal Investment Bank of Kelantan Inc.(RIBK、別名RIB)および株主との間で、買収および資本再編に関する法的拘束力のある契約を締結。2025年10月には追加の資金調達に関する拘束力ある取り決めを結び、2026年6月には段階的な出資に関する枠組み合意に署名した。交渉の継続とデューデリジェンスの複雑さから、取引完了まで時間を要したとしている。
同社は、RIBKから提供された取引書類や書面での連絡において、本件が王族メンバーを含む高位の機関から支援を受けている旨が明示されていたと説明。2026年6月の枠組み合意にはRIBK経営陣に加え、王族関連とされる当事者を含む、権限を得た人物が署名していたとして、署名者の身元や締結済み文書を踏まえ、合意どおりに完了すると合理的に見込んでいたという。
一方でRIBKは、契約上の主要義務を履行しなかったとAscendEXは主張する。具体的には、(1)署名時に支払うべき金額の未払い、(2)合意したエスクロー口座への入金未実施、(3)約束された資金供給の未実行、(4)買収取引の未完了、(5)取引に基づく資金を同社が一切受領していない――の5点を挙げた。
AscendEXによれば、同社は数カ月にわたり、資金がまもなく着金するとのRIBKからの書面確認を受けており、その説明は業務停止直前まで続いた。同社は、正式に署名された契約および書面上のコミットメントを前提に、プラットフォーム運営とユーザー対応を継続し、取引・統合作業のコストを負担したうえ、他の買収・資本再編の選択肢も見送ったという。排他的な取り決めにより他案件を進められない状態が続き、資金が入らないまま損失が拡大したとしている。
同社は、RIBKが出資義務を果たさなかったことが資本再編の実行を阻み、業務停止に直接つながったと説明した。RIBKとの取引自体が過去の財務難の原因ではなく、原因は2021年12月のセキュリティインシデントにあると強調。今回の取引はその解決のためのものだったが、不成立により想定していた資金支援を失ったとしている。
AscendEXは、RIBKおよび関連契約・枠組み文書に署名した全当事者に対し、取引経緯の明確化と、署名時に表明した立場に基づく書面コミットメントの完全履行を正式に要請した。署名文書に基づき責任を負う当事者に対しては、契約上・法的手段を含むあらゆる救済を追及する方針も示した。
同社は、RIBKの重大な債務不履行を理由に主要契約を正式に解除し、紛争解決手続きを含む契約上・法的手続きを開始したという。取引に関連する行為について、マレーシアおよびその他の関係法域の規制当局・法執行機関に通報する権利も留保するとした。正式契約、社内記録、書面のやり取りで立証可能な事項を除き、紛争解決、規制手続き、捜査、刑事案件、資産回収に影響し得る情報の公表は行わないとしている。
今後について同社は、全体状況を評価中であり、ユーザーの口座記録と同社残存デジタル資産は管理下にあると説明。経営陣は、(1)新たな救済・資本再編取引の成立に向け、投資家や再編パートナー候補との協議を継続する、(2)合理的な期間内に実行可能な救済案がまとまらない場合、破産または再編手続きの開始を検討する――の2点を並行して進める。
AscendEXは、ユーザーのアカウント残高はシステム上に完全に記録されているとする一方、出金再開の具体的な時期は提示できず、全ユーザーの請求が全額返済される保証もできないと説明した。最終的な取り扱いは再編交渉の結果に左右され、再編が成立しない場合は、適用法に基づく破産手続きに従って処理されるとしている。
同社は、再編の進捗、ユーザー請求の解決方針、問い合わせや関連資料の提出窓口について、公式情報を継続的に更新するとした。次回の発表は、遅くとも2026年9月6日までに公式チャネルで行う予定。
あわせて同社は、情報はAscendEXの公式チャネルからのみ入手するよう注意喚起。AscendEX関係者や第三者を装い、支払いを求める、秘密鍵・パスワードの提示を要求する、出金手続き・口座確認・請求処理を理由に追加入金を求める行為は詐欺として扱うべきだとした。第三者による詐欺に起因する損失について、AscendEXは責任を負わないとしている。
AscendEX経営陣(2026年8月5日)